(この記事は、2014年11月27日に投稿した記事を加筆修正したものです)
ワインの大敵、ブショネ
ソムリエがコルク栓を抜いた時にクンクンと匂いを嗅いでいるのを見たことがありますか? それは「ブショネ」をチェックしているのです。
「ブショネ(仏 bouchonne 英 corkey flavor)」の詳しい説明は端折りますが、「主に不良コルク栓に由来するワインの風味の欠陥」の事で、以前より減ったものの「百本に数本」という結構な高い割合で遭遇します。
ブショネのワインは、プロでなければ気づかない「軽いブショネ」から、普通の人でも気づき、美味しいワインだとは感じない「ひどいブショネ」まで程度の差こそあれ、一般的な飲料商品に当てはめれば「欠陥商品」の範疇に入ると思います。
「このワイン、何か美味しくないな」と思っても知らずに飲んでしまっている可能性があります。
ちなみに、ワイン以外の食品にもブショネはあるそうです。
ブショネは交換の対象か
先日、ブショネのワインを交換してもらうため、あるワイン輸入元の営業マンの方がフェルマータまで来てくださいました。
そのワインの返品交換をお願いしたところ、その営業マンの方の歯切れがイマイチ良くありません。ああ、これは社内での「ブショネ対応」のコンセンサスができていないのだと思いました。
ブショネの責任は誰がとるべきか
ワタシは、ブショネのリスクは輸入元が責任を持つべきだと考えます。
※国産ワインの場合は、生産者・小売店・消費者の距離が近いので、生産者(ワイナリー)に返品しやすいことから、生産者の責任(リスク)ということでよいかと思います。
輸入元は、ブショネのワインも仕入れてしまうリスクも勘案し、経営して下さいませ。
そのうえで、輸入元が海外の生産者にブショネ対策コルクやスクリューキャップの使用等、対策を求めればよいのです。
ブショネに蓋をするな
ブショネとその対応方法について詳しく説明している業界団体・輸入元・小売店のWebサイトを目にすることはまだ少ないです(検索すれば出てきますが)。
これほど大きな問題なのに、なぜ説明したがらないのでしょう?体調を崩すほどでないからでしょうか?しかし、明らかな欠陥商品なのです。
ブショネという欠陥が存在しており、もしも美味しくないワインに遭遇したら小売店に相談してほしい、という共通認識を育てないといけません。
ソムリエもワインショップも、ブショネを正しく理解する。消費者にきちんと説明できるようにする。
難しいテーマですが、業界全体で臭い物に蓋をせず、ブショネに向きあっていきたいと思います。
輸入元と小売店にお願い
「ブショネだから交換して」とお客様に言われたら、快く交換に応じて欲しいのです。
ブショネを嗅ぎ分けられない人が、そんなクレームは言わないですよね?
いぶかしげな対応をされると、非常に気分が悪いです。
現物を確認しブショネでなければ「申し訳ありませんが、これはブショネではありません」とはっきり交換をお断りすればいいのです。
そのためにも、ワインを扱う人はブショネを嗅ぎ分ける訓練を積まなければなりません。
「すべてはお客様のため、ワインのため」です。
ブショネがこの世から消えてなくなれば、こんな心配もしなくて済みます。それを切に願います。
SHINADA Hironobu (Sommelier)